貴金属の銀

銀ではなくシルバーと言ったほうがよさそうですが、元素記号はAgです。

シルバーリング

オリンピックのメダルのイメージもあり金に次いで2番目と思われがちな銀ですが、実は金とはまったく違った性能を持っていたりとあまり共通する部分はありません。金を太陽に例えるなら銀は月と、正反対の位置づけをされることもあるので理解すればするほど面白いのが両者の関係です。眩しくて直視できないのが金の放つ強烈な光沢とすれば、三日月の怪しい光にも似たシルバーの光沢はやや地味で魔力を含んでいるような気にさえなります。健康的な太陽の光にはない妖艶な青白い光線が金の特徴で、華やかでないとはいえませんが魔性が宿っていると感じるのが魅力でもあります。吸血鬼に有効な武器は銀製のアイテムですし、金ではないことからもわかるとおり昔から常に金>銀の序列ではないのです。2番目と評価されがちな貴金属ですが決して全てにおいて金に負けているのではなく、全く別の特徴を持っていながら総合的に2番目の人気ということになるでしょう。ちなみに化学的な特性としては電気の伝導率では金よりも銀の方が優れていますし、その分野での需要は銀の圧勝になります。電気を流しやすいから昔から吸血鬼対策で使われてきたのか、もっと宗教的な意味があったのかは知りませんが金にはない物を持っているという良い例になるでしょう。日本ではあまり吸血鬼と戦闘した経験をもつ人は多くなさそうですが、海外では目撃談も多数ありますし、物語の中でもたびたび登場しているのでその機会も何度かあったことが伺えます。その中でどこかの勇者が「おっ、この吸血鬼銀の剣で切ったらすごく痛がったぞ」と弱点を発見したのだと思いますが、この勇者の活躍がなければ今でも人類を脅かすモンスターとして吸血鬼が夜な夜な暴れまわっていたのだろうと思うと、歴代の勇者にたくさんの感謝をしたくなります。逆に金の足元にも及ばない部分もあり、王水にしか溶けない金に対して銀は多くの水溶液に弱さを見せてしまいます。硝酸や濃硫酸をかければあっさりと溶けますし、化学反応を起こしやすい性質を持つ銀は表面が酸化しやすいのでお手入れをしないと黒ずんでしまうのです。安定の金、不安定の銀との諺もありそうなほどで、空気中の硫黄化合物とあっさり反応して白い輝きを失ってしまいます。それはそれでいぶし銀と呼ばれる玄人好みの色彩なので悪くはありませんが、身につけるジュエリーが日に日に黒ずんでいくのはあまり好ましい目で見られませんし、女性のアクセサリーとしてはよい状態ではないでしょう。年季の入った銀製品との印象を与えるいぶし銀は、もっと他の場所で活躍させたいアイテムにこそ相応しい輝きです。ジュエリーとしての銀は金と同じく純銀では柔らかすぎるので、他の金属と合成して丈夫にしたものを使用するのが一般的です。含有率を示すのに18Kのように中途半端な数値を使うことは無く、千分率を用いてどれだけの銀が使われているのかを表わすことになっています。SV1000なら1000分の1000で純度100%の純銀、といった具合です。SV950なら95%、SV925なら92.5%と、とてもわかり易いので、金もこんな風にすればいいのにと思いますがいまさら変更できないのでしょう。合成される金属は銅などで、その組み合わせによって表面の色や光沢を変化させることができるので必ずしも純度が高いほうが美しいとはなりません。買取してもらうのなら色合いがよいほど高価になると思いがちですが、色よりも銀がどれだけ含まれているかの方が重要になるので見た目は黒ずんでいても多くの銀を含んでいる製品のほうが、質屋さんでは喜んで査定してもらえるでしょう。金と同じくどこかに刻印されているでしょうから、その記号を参考にして査定価格の予想をしてみるのも一興です。